秀衡塗特有の模様の意味と、金箔のはがれについて

【秀衡塗の模様の意味】と【金箔のはがれ】 について

秀衡塗は、金箔を使い菱形の四つ菱の模様が特徴です。

秀衡塗の模様の意味とは?

秀衡塗特有のこの模様は、【有職菱紋 ゆうそくひしもん】とよばれています。

当時の社会背景から、職が有る人(位の高い人、土地を治めてたお殿様)が職人に命じて作らせた菱形模様という意味です。

ご存知の通り、平泉は鎌倉に滅ぼされた地域であり、この模様が何を意味しているのか?確証する文献は今のところない為、このような表現でとどめています。

 

 

金箔のはがれについて

日々ご使用し何年と長い年月が経つと金箔が写真のように、どうしてもはがれてきます。

金箔は金の輝きを保つために、基本的にはりっぱなしで、上になにも細工してなく、販売しています。

コーティングなどすると、金の輝きが失われること、品質表示は、表面が漆表示でなくなること、など様々な理由があります。

 

これは何か悪い不良品みたいなイメージを持たれる方がいます。

しかし、正確にいうと【日々日常で使われてきた証】です。

綺麗な品を望むなら使わず飾っているだけで良いはずです。

過去の歴史の中で、茶人や民芸運動家が秀衡塗を評価し、価値を見出し、自ら好んで使われたのは、【使われてきた様】が、何とも言えない【美】を備えていた!からに他なりません。

例えば、ファッションの世界でジーンズは、色落ちや破れなど、【こなしてきた感】がある方が評価や価値が出て、好んではいている事に似ています。

 

翁知屋 先代 故 佐々木誠 著者

『みちのくの御器 古代秀衡椀の流れ』

価格  2000円

翁知屋 店舗にて現在も販売中

に掲載されている古代秀衡椀を見ていきましょう。

この中に掲載されている16世紀頃の古代秀衡椀はどれも、今は金箔はかすかに見える程度にはがれ落ちています。

内側も上塗りの朱漆が削れ、中塗りの黒漆と混ざって、根来という味わいになっています。

 

しかし、これら古代秀衡椀は、一つ数十万という美術工芸品として扱われており、東京の日本民藝館でも、秀衡椀は、スター工芸品として大切に展示されています。

表面を綺麗に直すことはいつでも可能です。しかし当社では、模様だけ直すことはなく、割れやカケ、塗りの破損など、道具として使えない場合のみ、修理をお受けしております。

 

当社製品をご購入頂くお客様には、お客様自身が日常で愛着をもって使われてきた秀衡塗の様をもっと楽しんで、【独自の美】を完成して頂きたいと思っています。

 

また多くの伝統工芸品や手工芸品も、深く広い視野で、お客様が愛着もって使うことで、価値がうまれる事をより楽しんでもらえるものと考えております。

 

投稿者プロフィール

翁知屋 5代目 佐々木 優弥
翁知屋 5代目 佐々木 優弥
昭和53年6月17日生まれ
岩手県平泉町にて伝統工芸「秀衡塗」の製造販売。
天皇皇后両陛下の御用食器一式や皇太子殿下献上品、伊勢志摩サミットG7各国首脳の贈呈品に採用、国内外のデザイナーとの創作品も手掛けグッドデザイン賞も獲得するなど高い評価を受けている。