秀衡塗や漆器を使用した後の、お手入れの方法について解説します。
正しく取り扱うことで、愛着を持って長く楽しめる事ができます。
 
長期間箱にしまった状態は、天然木の漆器にとって良い保存状態ではありません。
乾燥状態を引き起こし、急に使用すると、木の割れや漆はがれの問題も発生します。
できるだけ自然の環境で、使用したり、拭いたりして、水気を与えることで長持ちします。
 
天然木・漆器は、長期間箱にしまわず、使いながら自然の環境の中で保存することをお薦めいたします。

①  汚れに関して、使用後は、通常の食器用洗剤で洗って大丈夫です。
漆には抗菌作用が有り、しつこく汚れがこびりつくことはありません。
使用後すぐに手洗い頂ければ理想です。
 
長時間つけ置きするのは、やめてください。木と漆が剥離する原因になります。
洗った後は、すぐに手ぬぐいで水気を拭き取ってください。

②  食器洗い機、電子レンジ等、電熱で高温になる中に入れる事はやめてください。
下の写真の様に、金箔が高温になり、下地の木の部分が燃えてしまいます。

③  金箔の扱いについて

秀衡塗の特徴である菱形の金箔ですが、漆を接着剤として金箔を貼りっぱなしの状態である為、使用していく内に、こすれとれていきます。
 
しかし、秀衡塗は金箔の綺麗な状態を楽しむ器ではありません。
 
数百年という長い期間、茶人や民芸運動家が惹かれたのは、使い古された秀衡椀の美しさです。
 
金箔も原形をとどめ、漆も下地が透けて見えてきたその様に、日本独自の美意識【わびさび】を感じ、魅力を感じたのです。
 
もちろん金箔直しだけの修理もできますが、使われた歴史を無くすことにもなります。
 
是非、日頃から愛着を持ち丁寧に使用し扱った上での、このような様に秀衡塗の本当の美・価値があるとご理解頂ければと思います。

古代秀衡椀 <16 世紀 左 梅紋 右 沢瀉紋>
金箔ははがれ落ち、塗りは下地が透けているが、数百年間人々に使い古された美を感じる工芸品である。