漆器業界へ就職希望の皆様へ!

経営を引き継いで18年目になります。
大体3年に一度ぐらいある事ですが、また漆業界へ就職希望の学生がきました。
この事は凄い嬉しく是非チャレンジしてほしくて、その思いから私は全ての方(親御さん同席もある)に会って、夢のある事と現実のシビアな事、全て伝えています。

結構女の子が多く、数年前当社に2週間ぐらいのインターンで来てくれた女の子は
今岩手県内の工房に入り漆業界で食べています。

皆さまが想像つくように、芸術業界は、製作者(職人やクリエイター・工房)に、支援者(ファンやパトロン)がいてはじめて成り立つ業界です。

私が個人的に、長く食べていくのに必要な要素と考えているのは
・お客様が求める内容を具体的に表現する為の色々な技術
・デザイン・色彩等独特で愛される品を創造するセンス
・自分自身の売り込み方や実績受賞歴など実力を客観的に証明していくこと
・イイ人や仕事・企業に巡り合う運

実力が無ければ、他の人に置き換えられ、本当にシビアな世界だと常に考えています。

後継者育成は確かに凄い大事なのですが、一方で給料をもらえる環境に慣れすぎると、死に物狂いで自分の才能を努力して、ピカピカに磨いて伸ばし長く生き残る、という精神的な部分は、削がれていくような気がします。

おそらく漆器業界は、4〜5年である程度できるようになったら独立する流れが正しくて、産地形成をする意味でも、しっかりした技を持った強烈な個性が生き残ればいい、と個人的には考えています!

木の加工、漆塗り、絵をつける、デザインする、販売する、圧倒的な能力があれば、依頼したい人や会社は継続してあるはずだと思います。
現実に当社の定番の【木地】を制作してくれる男性は36歳、【塗り】をお願いしている女性は26歳とどちらも若く独立して、その腕と意気込みに、私も何か協力したいと思い仕事を継続してお願いしています。

その昔、秀衡椀を生み出した名もわからない先人は、何百年も圧倒的で強烈な個性を放って、それでいて今を生きる人々にも愛される器で本当に凄い品物を創造したと尊敬しています!

投稿者プロフィール

翁知屋 5代目 佐々木 優弥
翁知屋 5代目 佐々木 優弥
昭和53年6月17日生まれ
岩手県平泉町にて伝統工芸「秀衡塗」の製造販売。
天皇皇后両陛下の御用食器一式や皇太子殿下献上品、伊勢志摩サミットG7各国首脳の贈呈品に採用、国内外のデザイナーとの創作品も手掛けグッドデザイン賞も獲得するなど高い評価を受けている。