皇太子殿下への献上品

岩手県庁から文庫の製品問い合わせの依頼が8月頃はいる。
このときは何に使用するか回答なし。
模様を描く前の総黒状態の在庫があったため、製作は可能と返信する。
あとでわかったことだが、宮内庁の審査がはいることになっていて、OKがでたのが12月はじめ。

12月中旬、岩手県庁より『岩手県知事が皇太子殿下に献上する献上品の製作』と言うことの説明を受ける。
宮内庁の審査が通ったので、模様について相談の電話が入る。
いわて国体に際し、岩手県と平泉町へお越し頂いた皇太子殿下への御礼という内容ということだった。
模様のイメージ画を製作して欲しいとのこと。同時に略歴のようなものも必要を言われる。

四つ菱がどの角度から見てもきれいな配置になるように、秀衡紋様で大胆に華やかに金箔をデザイン。
秋の参拝、中尊寺では菊祭り最中だったこと、宮家の家紋ということで、【 菊 きく 】の模様、花の中心を
毛越寺本堂の天井に施された極彩色で彩りを加えて、平泉を表現したデザインを提案。

<紋様イメージ画製作>

宮内庁・岩手県庁、双方OKの返信を頂き作業に入る。
絵付け作業に入る
まずは金箔作業から。四つ菱をどの角度からもきれいに見えるように配置。
朱色で雲模様を塗る。

次にうるしの乾き加減を見ながら、感覚で均一に菱形にカットした金箔を貼っていく

次は菊紋の絵付け

完成した文庫。
製作にあたり、古代秀衡椀の紋様に込められた思いを見つめ直し、平泉にある寺院史跡や祭事の要素も
取り入れた、この土地をイメージできる紋様デザインに仕立て直しました。

この製作品については、身に余る大変名誉なお仕事を頂き、これまでの様々な日々が、間違えではなかったと
報われた気持ちになりました。

投稿者プロフィール

翁知屋 5代目 佐々木 優弥
翁知屋 5代目 佐々木 優弥
昭和53年6月17日生まれ
岩手県平泉町にて伝統工芸「秀衡塗」の製造販売。
天皇皇后両陛下の御用食器一式や皇太子殿下献上品、伊勢志摩サミットG7各国首脳の贈呈品に採用、国内外のデザイナーとの創作品も手掛けグッドデザイン賞も獲得するなど高い評価を受けている。