漆の調整 

皆さんこんにちは。
選挙すごいことになりました。今後どのような社会を形成していくのかじっくりみていきたいと思います。
ただ現実は厳しいもので、8月中に取引先が2件廃業してしまいました。
職人文化が崩れていく現実がヒシヒシと深刻にみえてきています。
私の思いは職人の文化をどのように経済を意識しながら守っていくのか常に考えて製作しています。木地師にしても塗師にしても高いレベルの商品を提供していく上でとても大切な存在なんです。
私はお店からお客さんの意見を近くで聞ける立場にいますので、その思いをすぐにカタチにしていくことに力を注いでいて、市場が求める新しい商品も多く開発しています。だから分業が当たり前の業界で下地から上塗りから絵付けまで全工程をこなしています。その開発商品の中で市場性がありそうな商品を、さらにクオリティーを上げていくときに、そこの役割は職人という専門家がいないと成り立たないのです。
だから職人は大切な人たちなのです。
崩れていく現実も受け止めながら、私も最近はさらに腕が上がるように数をこなすように心がけて製作しています。技術の近道はなく、数をこなして塗った努力がそのまま腕になっていくのかと思います。
今日は私の漆の調整をご紹介します。私が全国の塗師から聞きながら試しながらやっているやり方ですので、他の方と違うかもしれません。
今回は早く乾いてしまう漆を乾きを遅らせる調整です。
まずはこのような道具、漆や電気コンロやなべ、へらを使います。

そして私は半分ぐらいの漆をなべにあけて、グツグツと沸騰させます。

そのうちにグツグツが小さくなってきます。もう少し煮え切らして
元の漆と混ぜ合わせます。この煮えきらせて乾かない漆を作るやり方は鳴子漆器の後藤さんに教えてもらいました。

そしてこのように漉し紙で漉していきます。ちなみに平泉町の柳の御所遺跡で漆を漉した紙が見つかっています。約900年前の金色堂を造ったときのものであれば時空を超えたすごいロマンを感じることですよね。

右のグチャグチャと縮んでいるのが元の漆です。大体5時間ぐらいで乾いてしまっていました。私はどちらかというと肉厚で塗りたくて、24時間ぐらいかけてゆっくりと乾かしたいほうですので、そのぐらいになるように調整をかけていきます。
左側が今回作った漆です。塗り師は塗る前に必ず一週間ぐらいかけて漆のツケを見ています。そうしないと失敗してしまうからです。

みなさんには見えないことですが、ウルシはただ塗ればできてしまう塗料ではないんですよ。
こういう風に塗師にとって漆の調整は手の動きとあわせて大切なことです。
自分の求める漆の固さ・乾き時間・艶具合・ホコリの取り除きなど基本的なことを理解し肌感覚で覚えたうえで、そこから発達させた自分なりの塗り方を生み出していくことが今後求められているのではないかと思います。
まずは手始めに100個ほど塗ってみました。6時間ぐらいかかりました。
今後はもっと数をこなして同じ時間でもより多くこなせて、クオリティーをあげ、腕を磨いていきたいと思います。

それではまたまた。

投稿者プロフィール

翁知屋 5代目 佐々木 優弥
翁知屋 5代目 佐々木 優弥
昭和53年6月17日生まれ
岩手県平泉町にて伝統工芸「秀衡塗」の製造販売。
天皇皇后両陛下の御用食器一式や皇太子殿下献上品、伊勢志摩サミットG7各国首脳の贈呈品に採用、国内外のデザイナーとの創作品も手掛けグッドデザイン賞も獲得するなど高い評価を受けている。

漆の調整 ”へ0件のコメント

  1. 吉里吉里 チサコ より:

    こんにちは!
    誠実にお仕事に取り組んでいらっしゃる様子が
    伝わってきます。
    伝統を重んじ大切に大切にお仕事をしている方々に感謝ですね。
    技術の近道はなく・・・日々の小さな事の積み重ねが結果となるってなことでしょうか。
    身に沁みます。
    またフラリとお店に伺います☆

  2. YUYA@翁知屋店主 より:

    吉里吉里 チサコ 様コメントありがとうございます。
    漆を育てて採る人、漆精製問屋さん、林業関係者・木地師さん・塗師屋さん、一見小さく見える漆器業界でも多くの方が関わって流通が成り立っています。
    周りの環境で現実の難しさはありますが、自分の腕を常に磨いていれば、色々な要望を聞いて、様々な商品製作にチャレンジはできますから、そこだけは大切にしたいと思っています。
    またお話しましょう。