オリジナルオーダー『湯呑』

皆さんこんにちは。
先週まで紅葉真っ盛りだった平泉も少し葉も落ち、冬が近づいていることを感じます。
先週の中尊寺。
見事な美しさです。

さて今日は、オリジナルオーダーの湯呑にまつわるお話です。私自身色々と考えさせられる事案です。
相談者&商品アドバイザーは、101歳になる祖母の姉(大叔母)になります。
この何年間か会うたびに、自身の引き物の相談をされていました。
私としては、まだまだ元気に一人で歩くし、ボケている様子がなく、言葉もしゃべるから、そんなこと言わず、これからも元気でいてと毎回やんわり断っていました。もちろん今も元気に健在です。
しかし今夏、見方を変えて、終活に協力することを決めました。
『妹が嫁に行った店、今もあなたに引き継がれていて、そこの品物を使いたいんだよ~』と毎回その思いを言われて、なんというか、いつかくるその時に、これしかないと有り合わせの品物(在庫があるものという意味)で間に合わせるほうが、逆に悪いのではと思ったのでした。
大叔母の色々な思いと、1世紀を超えて長寿でしっかり生きてきたのだから、私の役割としては、ちゃんと送りたいものをオリジナルで製作するほうがいいんじゃないかと考えを変えてみました。もちろん家族の同意もとりながらです。
大叔母は毎日のお茶に時間に、私の祖父の時代につくった、桑の木の湯呑を大切に使っていました。
もう40~50年になるでしょうか。とても年季が入っていて、いい色合いです。桑の木は長寿の木と言われ、大変人気がありました。ただ今は、カイコ産業が破滅していて、桑の木を育てる方々が減っていき、桑の木の商品開発ができない状況です。
この湯呑ですが、使いにくい部分が正直あるようでして、具体的に飲みにくい点とか、手に持ちやすさなどのお話をしていたので、それなら、湯呑を作ろうというお話になりました。ただ、桑の木は中々材料手配が難しいので、似たように木目がはっきりしているケヤキ材を使用することにしました。
色々な話をもとに図面を4点考案し、木地師の堀君にサンプル挽きを頼み、漆塗装をして、8月からかかっていたサンプルがようやく完成しました。先日見本を見せたら、大変満足していました。
私も老人の飲み心地やグリップ感覚を勉強でき、満足できました。これから量産に入る所です。
こちらがその品物です。
この中で、口当たりや手になじむ感じから、全体のフォルムを伝統的なライン~現代のモダンなラインまで色々と試してみました。
意識したのは、『使いやすく、美しく』です。
左端の下に波状の持ちやすくしたカタチに決まりました。
他のカタチもせっかく考案したので、当店の商品としていくつか来春登場予定です。
今まとめて材料と木地挽きをお願いしました。
今、木自体(業界では『荒取り』と言います)の在庫がなく、すべて一から準備するので、オリジナルは大変時間がかかります。
他のオリジナル注文も、長くて1年、どんなに早くても3~4か月は見ていただいています。
今回の事例は何が正解かわかりませんが、とにかく満足してもらえれば私としてはそれでいいと思っています。
それではまたまた。
 

投稿者プロフィール

翁知屋 5代目 佐々木 優弥
翁知屋 5代目 佐々木 優弥
昭和53年6月17日生まれ
岩手県平泉町にて伝統工芸「秀衡塗」の製造販売。
天皇皇后両陛下の御用食器一式や皇太子殿下献上品、伊勢志摩サミットG7各国首脳の贈呈品に採用、国内外のデザイナーとの創作品も手掛けグッドデザイン賞も獲得するなど高い評価を受けている。