KIZU<傷>シリーズ
皆さんこんにちは。
ゴールデンウィークがあっという間に過ぎてしまいました。
とにかく天気がよくて、普通の桜にしだれ桜までもが満開で近年で最高の
五日間だったと思います。
私の連休は、仕事と平泉町内の行事のボランティアで、おかげさまで真っ赤に日に焼けました。この時期の町民は、毎日飲み会が続く、体とサイフにハードな日程になっております。
さてタイトルに書いたKIZUシリーズとは何なのか??
答えは天然木を加工したときに、自然にできていた傷を活かして商品を製作してみないかというマニアの方にしか理解できないかもしれない取り組みです。
私の工場を見学した方から、木地に傷があってはじいていたものを見て、
こういうのを傷を見せつつ、しっかり使えるように製作できないかというところから始まりました。
製作コンセプトは、倒産やリストラや家庭環境の問題等々、なかなか
生きにくくなっている現在の社会で、今までの人生で心や体に
大きな傷(挫折・大切な方との別れ等々)を負った方々が、天然木に
刻まれた傷を見て、今の自分と照らし合わせて浸ってもらい、それでも、
この傷があるから、全体が活きていたり、渋みや深みを与えていたりするんだよ、というメッセージが込められています。
割れなどがひどい木は通常は捨てられたり、布や和紙などでしっかりと固定されて、それから塗り重ねられ綺麗に見えないように仕上げられておりました。
しかし日本文化には他の国にはない、わび・さびという美意識が取り入れられ、お茶の世界を中心に広がっていき、日本人の心にはそういうモノを愛する精神が残っているように思っております。
漆器の世界では綺麗に塗られたものがすべての基本の価値観ですが、
少し冒険し、木が根を生やして育ってきた間に起こった、割れや傷を
そのまま受け止めるような仕上げにできればいいのかなぁと思っています。
いい感じで割れています。一度塗って研いでみたところ。
ここからどんな感じにもっていくか発想と腕の見せ所です。
まだまだいっぱいあるので、色々と試してみます。
内側はもちろんお酒が漏れないように、丁寧に下地をしていきますが、
外側は一つ一つが持つ表情を最高に高めていければいいかと思っております。
それではまたまた。
投稿者プロフィール
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昭和53年6月17日生まれ
岩手県平泉町にて伝統工芸「秀衡塗」の製造販売。
天皇皇后両陛下の御用食器一式や皇太子殿下献上品、伊勢志摩サミットG7各国首脳の贈呈品に採用、国内外のデザイナーとの創作品も手掛けグッドデザイン賞も獲得するなど高い評価を受けている。