最近の仕事

皆さんこんにちは。明日で6月も終わりです。
これからドンドン暑くなってきますね。
今日は最近の仕事を掲載したいと思います。
まずは修理をしている<あぶみ>の情報。
内側に大きな凹みがありましたので、そこに麻布に糊漆をつけたものを
詰め込んで埋めました。

その上からその凹みと内側全体ががなるべく平らになるように
糊漆と麻布で下地をしました。実は南部鉄器の伝統的な塗装は
漆の焼付け塗装なんですよ!だから漆との密着はバッチリです。

<あぶみ>の修理は初めてやっているので面倒ですが、1個目で作業状況
(漆の密着や乾き具合)を確認しながら、もう一方を一工程遅れで仕上げています。こうすると2回分修理を経験したことになるので今後にプラスかと考えていますが。
この<あぶみ>は江戸時代ぐらいのもので、ホントすごく厚めに錆下地がほどこされていました。当時はきれいなものだったと思いますが、年月がたつと漆分が木に吸われて、パサパサでボロボロな下地になっていました。
この状況を年配の職人さんにみせると、江戸時代ごろのものはけっこうこういう下地がされているものが多いとのことでした。
結局シンプルに漆の塗り重ねがいいんだと年配の職人さんにいわれました。錆を使うにしても生漆分を多くして、とにかく薄くのせてその上からさらに生漆をのせないといけないといわれました。
200年後とかの職人に見られても恥ずかしくない仕事をできるかぎりしたいです。どうしてもコストのことは無視できませんが。
そういった意味で下の写真の商品は、古代秀衡椀の復元を浄法寺漆で
シンプルな塗り重ねのやり方でやりましたので満足な商品です。
無地のお椀がまだあったので絵付けをしました。
絵付けも祖父が書いた本を見ながら、型紙を使わずに描きました。

このお椀はかなりざっくり製作しています。本来の商品なら金箔とか
塗面のホコリとかホントに気にしてきれいにしていますが、このお椀はきれいを目指すよりも丈夫で、古代のお椀のイメージを大切に製作しています。
なんか型にはまった商品より手づくりの存在感が強いんですよ。
模様は特に型紙を使わないで、フリーハンドで描いていますから
雰囲気がちがうんです。なるべく一発勝負で描きたかったので、ちょっとはみ出して曲がっていたり、かすれてたり、余計なところに漆がついたりしてるんですけど。
型紙があることで常に同じ形、同じ位置に効率よくできるんですが、
決まりきった物って本来商品が備えていなければいけない魅力が半減してしまうのかもしれません。
フリーハンドの松紋。

民芸運動家、柳宗悦が秀衡椀を評価したのは、お世辞にも上物できれいともいえないだけど、黒と朱と金箔と漆絵のなんともいえないバランスの<直感の美>と言っています。あまりに表面を神経質に作ることに神経を注いでいる作り手が、忘れかけている魅力があるのかもしれませんね。
最後は八画のお箸です。このお箸人気があるんですよ。
その下地の様子。1回生漆を塗って研いでいます。

それからシボ漆で滑り止めを付けています。
こんな感じ↓

アップで撮りました。左側の白く見えるのが豆腐。それを朱漆に
混ぜてシボ漆を作ります。豆腐以外に卵白とかでも代用できます。
それをスポンジでたたいて箸先にボコボコを付けていきます。
右側のピンクの紙は滑り止めの長さ見本です。箸をおいてちょこんと
印をつけます。

最近の仕事でした。
それではまたまた。

投稿者プロフィール

翁知屋 5代目 佐々木 優弥
翁知屋 5代目 佐々木 優弥
昭和53年6月17日生まれ
岩手県平泉町にて伝統工芸「秀衡塗」の製造販売。
天皇皇后両陛下の御用食器一式や皇太子殿下献上品、伊勢志摩サミットG7各国首脳の贈呈品に採用、国内外のデザイナーとの創作品も手掛けグッドデザイン賞も獲得するなど高い評価を受けている。